展覧会→映画へ

 ───────────────────────────────────────

《ジャコメッティ 最後の肖像》が公開されている。この手の作品は、キャンバ

スにむかう一筆のストロークで、作品の出来が窺えてしまう。

モジャモジャ髪に猫背の風貌。偏執狂的な物の配置へのこだわりや完全主義な創作

態度は、ジャコメッティの真実によく迫っている。彫刻作品が乱立する埃っぽいア

トリエの空気感もよく設えられている。凡庸に事実をなぞって終わってしまう芸術

家の伝記映画とは、一線を画している。

 

ちらっとサービス出演する矢内原を軽薄な青年として描写しているのが、なんとも

残念である。展覧会をご覧になった方には、とくにオススメ!展覧会では知る由も

ない本人像に迫ることができる。

 

惜しむらくは、'56〜'61年に渡り、延べ230日間モデルを務めた理想のパートナー

シップ=矢内原伊作との関係性をテーマとして選ばなかったこと・・。帰国を数度

にわたり延長しながらモデルとして臨むジェームズ・ロードだが、たった18日間

と6年間にわたる矢内原との関係性とは、比ぶべくもない。作中、ジャコメッティ

の妻=アネットと矢内原の様子が描写される。だが、じつは矢内原はジャコメッテ

ィと関係したかったのだろう。残念ながらふたりともに同性愛者ではなかった。そ

の代替行為として、近親者であるアネットとの関係がある・・。なんとも複雑なア

ーティストの世界ではある。

 

https://www.youtube.com/watch?v=kfeI6iRyWZA