シャツの行方

                ⒸHisao Takeuchi

こどもの頃、母がよく手づくりの洋服をきせてくれたからなのか、思春期にはす

でに衣服に関心を持っていた。中学の頃には、シャツの前立てのデザインがどう

とか、ジーンズの裾丈を左右ちがうセンチで指定しており、ショップの叔父サン

に苦笑されたりしていた。そして、画学生の時代を経て就職したのは、アパレル

メーカーの宣伝企画で、服自体をデザインする仕事ではなかったが、ディスプレ

イやショップデザインを通して、服とのつきあいがはじまった。

 

デザインからダンスの世界へと転身してからも、衣装にはとくべつな思い入れが

あり、所謂衣装然としたコスチュームは好まないことから、衣装担当をおかず自

らスタイリング作業をするハメになっている。とくべつな場合を覗いて、作中人

物は匿名性の人物を想定している。プレーンな白いシャツに黒いパンツ、または

タイトスカートと云った案配である。

 

前々から、ファッションに関わる上演作品をつくってみたかったのだが、今回偶

然その機会を得ることになった。年令も性別もちがう複数のひとが、おなじブラ

ウスを着回すだけで、物語が転がりだすのではという構想である。タイトルは8

年前の構想通り、◎SHIRTS_story__と名づけた。自分のシャツを脱ぐ。相手

と交換する。そして立つ、歩く、、このシンプルな行為のなかには、衣服を通じ

た無言の対話があり、ひとの人生時間、性別、固有の身体性をそこはかとなく醸

しだす試みである。《パブローブ》の企画趣旨から出演者を公募するのが必然で

あろうとしたところ、自身もふくめて40〜50歳代が多くなってしまい、年令

のバリエーションにあまり開きがなくなってしまったのが、思惑外となった・・。