七人の侍

先月、【カラダノート】special_<建築と身体のドラマ>と銘打って、建

築家の設計作品を会場にトークイベントを主催した。本題に入るまえに、サ

イレンスダンスをつくった10セレクションとして、影響を受けた作品や作

家をあげさせてもらった。なかに黒澤明の<七人の侍>をとりあげた。いま

さらいうまでもないが、名画中の名画である。見る年代毎に発見があり、井

上ひさし氏などは、30回以上観覧したあげくに、死ぬまでにあと20回は

みたい!と生前語ってみえた。

 

脚本は、橋本忍、小国英雄と黒澤三人の共同シナリオなのだが、じつに巧み

である。登場人物の造形力も舌をまくほどに考え尽くされている。いくつか

の戦乱を戦い抜いた勘兵衛=志村喬と腹心、七郎次=加藤大介との関係、農

民あがりのまがい侍、菊千代=三船敏郎、禅僧のごとき寡黙な剣の達人、久

蔵=宮口精二、九蔵に憧れる若き侍、勝四郎=木村功、グループのムードメ

ーカー平八=千秋実、参謀格の五郎兵衛=稲葉義男。いまなら一人づつで一

本撮れそうなキャラクターばかりである。

 

前半のストーリーでは、従来の時代劇ではみることができない侍の生活描写

がされていること。野武士の暮らしがどうなっていたのか、農民との関係な

ども興味深い。なにより、勘兵衛と七郎次が、腕利きの侍をスカウトする件

はエピソードに富みおもしろい。往来を通りすぎるだけの端役で、黒澤監督

にこってり絞られたのはデビュー間もない仲代達矢。久蔵が一瞬の太刀で切

っておとすスローモーション撮影のうつくしさ。刀を抜いて走る勘兵衛のフ

ォームの見事さ。わくわくどきどきするシーンの数々、目を見張るどしゃぶ

りの雨のなかでの戦闘シーンに完結されるクライマックス。映画の本領を発

揮し尽くした作品は、あらゆるクリエーションへの刺激剤として、いまも生

き続けている・・。